家の買い時を「支払総額」で考えてみる
―安心して家を買いたい人のために、購入タイミングの考え方について教えてください。
早志さん:住宅ローンをご利用の場合には、支払総額から考えてみてもいいかもしれません。
―支払総額とはなんですか?
早志さん:支払総額は、賃貸物件に住んでいる間にかかる費用と、購入にかかる費用の全てを合わせたものです。購入のタイミングによって、この総額が変わってきます。
具体的にはこのような費用があります。
●家賃・管理費
●更新料 (代表的なもので2年おき。地域によりルールが異なる)
●(場合によっては) 退去費用、引越し代、仲介手数料、新居の敷金・礼金
●頭金、諸費用、仲介手数料
●住宅ローン
●(マンションの場合)管理費・修繕積立金・駐車場代/(戸建ての場合)自己管理で維持費の積み立て
●火災保険料、団体信用保険料、固定資産税・都市計画税 など
賃貸に何年住んでから購入するのか、更新費はどれくらいかかるのか、どのような住宅ローンを組むのかなど、条件によってシミュレーションの結果は変わります。
賃貸と購入、それぞれにかかる費用を現状に合わせて計算してみてください。具体的にはこのようなものを計算に入れてみるといいのではないでしょうか。
支払総額を出す際に計算するもの・家賃×年数
・賃貸の更新回数×更新料
・引越し費用
・頭金
・ローンの毎月返済×返済期間
・毎月の管理費等の支出
実際にシミュレーション! 購入「いま」、「5年後」、「10年後」と「ずっと賃貸」の場合で比較
今回は例として、次の4パターンでシミュレーションしてみます。シミュレーションは細かい条件設定によって結果が異なってくるので、参考程度にご覧ください。
ー A:今年買う ー B:5年後に買う ー C:10年後に買う ー D:ずっと賃貸
円 / 経過年数
賃貸時:家賃10万円、2年に一度更新
購入物件価格:3000万円
金利:1.5で固定/ 元利均等返済/毎月管理費や維持費等に3万
A:「いま」頭金なしフルローンで購入する場合、返済期間35年
B:賃貸物件に住みながら「5年後」頭金250万円で購入する場合、返済期間30年
C:賃貸物件に住みながら「10年後」頭金500万円で購入する場合、返済期間25年
D:ずっと賃貸に住む場合
この場合、購入時期が早ければ早いほど費用が抑えられる結果となりました。購入することを決めている場合には、いま頭金なしのフルローンで買った方がいいということになります。
このシミュレーションでは、購入の場合は、月々の返済が9~10万円となっていますが、そのほかにも修繕費の積み立てや管理費の出費があると考え、3万円を足して12万円~13万円の出費があるとしています。
一方賃貸の場合には2年に一回の更新費を24回で割って均すと、毎月10万5千円程度の支払いになります。そのため、ローンの支払いが終わって、しばらく経つまでは賃貸の方が総額が抑えられています。
しかし、賃貸が購入を超えるタイミングがあります。これは、購入が、住宅ローン完済後には維持費や管理費(マンションの場合)などだけになる一方、賃貸では変わらず家賃と更新料がかかるためです。
このように、賃貸と購入で比べる場合、ローンの完済までは賃貸の方が総額が安くなることもあります。
しかし、よほど家賃を抑えてなければ、70歳、80歳と歳を経るにつれ逆転してしまう可能性も十分あります。また、住宅ローンの完済後、居住費が少なくなる購入に対して、賃貸の場合はずっと同じ家賃がかかります。
そのため、賃貸でずっと暮らしていくためには、老後に備えて十分な貯蓄が必要です。「老後の暮らしはどうするのか」ということも考慮して考えてみるといいでしょう。
住宅ローンはいつまで組める?逆算して考えてみる
―そもそも、住宅ローンを組める年齢制限みたいなものはあるのでしょうか?
早志さん: 多くの金融機関の住宅ローンは、79歳までに完済していることが条件です。そのため、35年でローンを組みたい場合には、44歳までにローンを申し込んでいる必要があります。
もし、会社にお勤めの場合には、79歳より早い時期に定年退職を迎えていると思うので、ローンの支払いを何歳まで続けられるか、ということから逆算して家の購入時期を考えてみることも必要でしょう。
―他にも確認しておいた方が良いことがあれば教えてください。
早志さん:年齢制限という程ではないですが、家の購入は、健康なうちの方が安心だという事は言えるかもしれません。
というのも、住宅ローンの借り入れ条件として加入が必要になることが多い「団体信用生命保険」というものがあるんですね。
団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者が返済中に亡くなってしまったり、高度障害状態になってしまったりしたときに、ローンの残額を肩代わりしてもらえる住宅ローン専用の保険のことです。
この保険に入っていれば、住宅ローンの契約者に万が一のことがあった場合でも、残された家族はそのまま家に住み続けることができます。ただ、ご加入時の健康状態によっては団体信用生命保険に加入できない場合もあります。
つまり、いい条件でローンを組めなくなる可能性もあることは、注意しておいた方が良いでしょう。その意味からも、健康状態の良好な時期に、住宅ローンを組んで家を買っておくというのは一つの選択肢です。