不動産投資の第一歩として、ワンルームマンションへの投資を考えている方も多いでしょう。そこでこの記事では、不動産のプロである宅建士が不動産投資の初心者向けに、ワンルームマンションの不動産投資についての基礎から、メリット/デメリット、リスクなどを詳しく解説しました。利益が出やすい物件や、事業計画書の作り方についても、わかりやすくまとめているので、これから投資を検討している方はぜひご一読ください。
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ワンルームマンション投資とは
ワンルームマンション投資とは、ワンルームマンションを購入し、物件を賃貸して毎月の賃料収入を受け取ることで利益を得る投資です。ワンルームマンション一棟に投資することも含まれますが、一般的には区分所有のワンルームマンション一部屋に投資する形態を指します。投資金額は、エリアや専有面積によって異なりますが、500万円程度から始められるものもあり、不動産投資の初心者が始めやすい投資と言えるでしょう。
1. ワンルームマンション投資の利益不動産投資の利益には「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」があります。インカムゲインとは、資産を保有している期間中に投資対象から得られるキャッシュフローのことです。不動産投資の場合は、毎月の賃料収入がインカムゲインとなります。一方、キャピタルゲインとは、資産の売却時に得られる値上がり益のことを言います。ワンルームマンション投資の利益は、これらインカムゲインとキャピタルゲインの合計額から、必要経費を差し引いて計算されます。
2. ワンルームマンション投資における入居者の特徴入居者の特徴を掴むことは、投資期間中の収入・支出予測をするための重要なファクターです。ワンルームマンションは、大学生や新社会人をはじめとした若い世代が入居者ターゲットの中心になります。そのため、入居者の募集時期は入学や入社前の3月上旬から下旬に集中します。また卒業や校舎が変わる、勤務地が変わるなどの理由によって、入居者が短い期間で入れ替わるのも特徴的です。
ワンルームマンション投資のメリットワンルームマンション投資は、株式や多くの投資信託と異なり、毎月安定した収入を受け取れる点が魅力です。また、借り入れを活用することで自己資金よりも高額な投資が可能となります。このほか、生命保険としての効果や相続対策効果を見込んで投資する方も少なくありません。単なる賃料収入や値上がり益だけではなく、さまざまなメリットを得られるのも、ワンルームマンション投資が人気を博している理由のひとつです。
1. 毎月安定した収入が得られるワンルームマンション投資は毎月賃料収入を受け取るため、安定的な収入を得る手段として投資する人が多いでしょう。金や美術品・アンティークなどの実物資産投資や、株式・先物などの金融商品は、毎月収入を得られるわけではなく、キャピタルゲイン中心の投資です。一方、ワンルームマンション投資の場合は、毎月利益を生み出しますので、その分、貯蓄や生活費に回すことができる点で優れています。
2. 金融機関からの借り入れを活用できるワンルームマンション投資は、不動産を担保に金融機関から借り入れできるため、少ない資金で大きな投資をすることができます。特に日本では不動産融資の実績が多く、ローンが通りやすいのもメリットです。
借り入れを活用することの最大の利点は、レバレッジ効果を享受できることです。レバレッジとは 「てこの原理」と言われるもので、小さい力で大きなものを動かせる=少額の資金で大きな投資ができることになり、その分、得られる利益も大きくなります。 このレバレッジ効果により、物件の利回りよりも実質的な利回りが高くなり、投資回収が早まります。
3. 時間的・場所的に分散投資ができるワンルームマンション投資は、1住戸にかかる資金を抑えることができます。そのため、エリアや購入時期を分けて複数物件を購入することで、リスクを分散することができるでしょう。
分散投資は投資の王道で、これは不動産投資においても同様です。最近では地震や水害などの天災が多く、一部の地域で甚大な被害をもたらすこともあります。限られた投資資金を時間的・場所的に分散して投資することで、できる限りリスクを抑えた投資をすることが望ましいでしょう。
最近では、保険の代わりにワンルームマンションを購入する人も増えています。不動産を担保にローンを組む際に団体信用生命保険に加入すると、ローンの契約者が死亡したときにローンが完済されます。死亡後は、ローンのないワンルームマンションを相続財産として残すことができ、これが生命保険の代わりになるという仕組みです。
また、働いている期間中にワンルームマンションを購入し、賃料でローンの返済を続け、退職前にローンを完済してしまえば、その後年金代わりに賃料を受け取り続けることも可能です。
5. 相続対策になるアパート・マンションを建設したり、収益不動産を購入したりして相続対策を行うことは広く知られています。貸家の評価減、貸家建付地の評価減、小規模宅地の評価減等による財産価格の評価減により、相続税の負担を軽減することができるほか、複数のワンルームマンションを保有すると、遺産分割がしやすくなるというメリットもあります。ワンルームマンションは流動性が高く換金しやすいため、相続後の売却についても、それほど手間がかかることはありません。
ワンルームマンション投資のリスク
不動産投資におけるリスクは、ワンルームマンション投資にも同様に当てはまります。ワンルームマンション投資は実物資産への投資であり、投資信託などの金融資産への投資にくらべて、リスクの顕在化がダイレクトに収益の下落に結び付きやすい特徴があります。不動産投資にリスクはつきものですので、リスクを理解しつつ、事前の対策を万全にして投資を始めることが大切です。
1. 空室リスク不動産投資において、空室リスクは常に気を配っておく必要があります。毎月の収入は賃料に依存していますので、空室が続くようであれば、早急に手だてを講じなければなりません。
特にワンルームマンションの入居者のターゲットは学生や新社会人が中心のため、入居募集時期に偏りがあります。2月から3月の繁忙期に空室が埋まらなかったり、期の途中で退去してしまったりすると、そのまま数カ月空室のままということもあります。このような儲からない時期があると想定した資金計画が必要です。
2. 家賃下落リスク・価値下落リスク建物の老朽化に伴って、少しずつ家賃が下がっていくことは避けられないリスクですが、前もって事業計画に織り込んでおくことである程度はコントロールできるリスクです。一方で、再開発や学校の移転・閉校などによる人の流れの変化、周辺エリアでのワンルームマンションの供給過剰による家賃下落や建物価値の下落のリスクは予測しにくいリスクであると言えるでしょう。事前の対策は難しいものの、投資検討時のリサーチをしっかりと行うことで、リスク回避に繋がる面があります。
3. 災害リスク・修繕リスク風水害や地震などの災害によって建物に修繕の必要がある場合には、管理費や修繕積立金を原資に管理会社が修繕を行います。もっとも、予想以上の修繕費用がかかってしまう場合には、修繕積立金が割り増しされることがありますので、注意が必要です。修繕積立金の増加によって毎月の収入は低下し実質利回りが下落します。これは、投資終了時の売却価格の下落にも繋がり、全体としての収益も押し下げるため注意しておきましょう。
4. 金利上昇リスク現在は金利が低いため変動金利が有利ですが、金利が上昇するとキャッシュフローが赤字になる可能性があります。仮に借入金額2,000万円、30年のローンを組むと、金利が2%から3%に上がっただけで月々の返済額は1万円以上増加します。募集賃料を上げることは難しいために、キャッシュフローの赤字を自己資金でまかなわなければならない事態に陥ってしまうかもしれません。世界各国が政策金利を上げている中、低金利を維持しているのは日本だけですので、金利上昇は現実におこりうるリスクと考えておく必要がありそうです。
利益が出やすいワンルームマンションの見分け方
ワンルームマンション投資の収益の柱は、賃料収入と売却益です。いかに空室リスクが少ない物件に投資し、あわせて投資期間中に建物価値を維持できるかが成功率を高めるポイントになります。購入した後に空室リスク対策としてできることは限られているため、投資前の調査や検討をしっかりやっておくことが重要です。投資エリアや周辺環境、交通などの利便性のほか、管理会社による物件の管理状態もチェックしておきましょう。
1. 管理状態がよく外観がきれい物件の管理状態の良し悪しで、物件の価値は変わってきます。日常管理の積み重ねによって、物件の価値は上昇したり、逆に下がったりするのです。外観がきれいで清掃が行き届いているマンションであれば、入居者も気持ちよく生活できるでしょう。プロの目線でなくても、入居者の気持ちになってエントランスや共用部分などのよかった点をチェックすれば、管理状態の良し悪しが見えてきます。
2. 駅近・人気エリアにあるワンルームマンションの場合には、利便性の良い立地の物件を選ぶことがとにかく重要です。駅近で人気のあるエリアにあれば、空室リスクはある程度低減されます。ファミリー向けマンションの場合には、エリアによっては駅遠の物件でも入居率の良いマンションがありますが、これは利便性よりも住環境の良さや駐車場の安さなどが重視された結果であり、これがそのままワンルームマンションに当てはまるわけではありません。
3. 入居者ターゲットが多く住んでいる投資前に、どこの大学・専門学校などの学生が多く住んでいるエリアなのかを調査することが大切です。立地としてビジネスマンの需要が見込めるのであれば25m2前後、広めのワンルームマンションを選ぶことも視野に入ってきます。
4. 中古物件である新築物件は、「新築プレミアム」と言われる価格の割り増し分があるために、物件価格が割高になっているのが一般的です。その分家賃も新築募集のときには高く設定できますが、数年後には周辺相場の家賃に落ち着くため、当初の利回りが維持できません。売却価格も、周辺の中古物件の相場を調査して設定されます。結果的に、当初より中古物件を狙って投資したほうが、投資利益を出しやすい市場環境と考えられるでしょう。
ワンルームマンション投資計画の立て方ワンルームマンション投資には保険としての効果や税効果などさまざまなメリットがあるものの、毎月のキャッシュフローが赤字となってしまうようでは本末転倒です。まずは、物件から受け取る収益と必要経費、将来の出費のための積立をメインとした事業計画の作成が重要です。
1. キャッシュフローを中心とした投資事業計画を作成する会計上の損益計算書を中心とした事業計画は、実際のキャッシュフローとズレがあるため、分析に慣れていないと資金不足に陥る可能性があります。特に、所得税、事業税などの税金については事業計画から抜けがちです。税金を考慮し、キャッシュフローを中心とした事業計画を立案すれば、安定した不動産経営を実現できるでしょう。
2. 余裕を持った資金計画を立てる不動産経営に空室リスクや修繕リスクはつきものです。1~2カ月空室になってしまうことは日常的におこりますし、エアコンやキッチン、浴室、給湯器などの設備についても、故障すれば修繕費や交換費用がかかります。ぎりぎりの資金計画だと、自己資金の持ち出しに耐えられなくなり、売却せざるを得ないことにもなりかねません。
3. 投資事業から得られる収益性を重視するあくまでも賃貸から得られるキャッシュフローや、売却時の手残り資金としての収益を重視して事業計画を立てましょう。不動産投資の営業トークとして所得税の節税を狙った減価償却による損益通算(所得税・住民税の負担軽減等)や、年金代わりの運用をうたう業者もいますが、メインの投資事業が赤字になると本末転倒です。結果的に投資の効果を十分に得られないまま、売却という結果になりかねません。
ワンルームマンション投資の注意点
ワンルームマンション投資によくある失敗パターンは、資金不足に陥ってしまうことです。ワンルームマンション投資は、不動産投資の初心者向けの投資として始めやすい反面、わずかな自己資金で資金計画に余裕のない投資になってしまっている例が多く見かけられます。ワンルームマンション投資の特性を理解しつつ、余裕を持った資金計画を立てましょう。
1. 入居者のターゲットを明らかにするワンルームマンションは大学・専門学校生、一人暮らしの社会人が入居者ターゲットの中心となりますが、エリアや年齢などによってどのようなワンルームマンションが人気なのかが異なります。周辺物件を比較検討し、どのような人が入居者のターゲットなのかということを明らかにしておくことが大切です。
2. 自己資金ゼロの投資はしないフルローンで投資すると、元利払いの負担が大きいため受け取れるキャッシュフローは小さくなります。将来の年金代わりのための投資として、元利払い・必要経費と賃料収入がほぼイコールになってしまうような投資を勧められることもありますが、このような投資では、短期間の空室が出ただけで、自己資金からの持ち出しが大きくのしかかってきます。やむなく売却しようとしても、借入元本が思ったよりも減っていないことが多いため、売却後も残債が残るケースが多いです。
3. 設備更新の費用を見込んでおくユニットバス、システムキッチン、給湯器などの設備は一定期間後に更新する必要があるため、その費用を見込んでおく必要があります。設備ごとに更新時期の目安がありますので、築年数と合わせて設備の更新履歴をチェックしてみてください。いままで一度も設備の交換がなければ、更新費用を購入価格から割り引いて計算しておくと良いでしょう。
まとめワンルームマンション投資は、少ない資金で気軽に始めることができるために、初心者でも始めやすい投資であると言えます。しかし、ずさんな資金計画のためにワンルームマンション投資に失敗している人も多く見かけるのも確かです。事前にしっかりと事業計画を立てておけば、安易な投資を防止し、投資利益を出しやすい物件を見つけることができます。ワンルームマンション投資を足掛かりに物件を増やしていき、不動産投資家として成功している人はたくさんいます。成功例を学習するためにセミナーや書籍を参考にしてみるのも良いでしょう。